2016年10月2日日曜日

ハニカムベル(HoneycombBell)の音楽的構想

MFT2016で発表したハニカムベルですが、今後の展開とその音楽的な構想について少し紹介しましょう。

現在、12半音分の六角形が3×4に並んだ試作品を完成させましたが、音を重複させてもこの六角形を5×4に並べてみる試作を今後製作する予定です。図にすると、以下のような感じです。

さて、このような配列が音楽に何をもたらすか、ちょっと考えてみましょう。

これまで通り、斜め右上に動くと半音上がりますが、よくよくみてみると、斜め右下に動くと全音上がります。また、左右は短3度の関係となります。

特に全音上がる動きは、5段に並べてみて私も初めて気がついたのですが、これによってハニカムベルの音楽的表現が格段に上がると感じています。
実際の音楽で音程の移動のほとんどは順次進行であり、順次進行とはすなわち半音、および全音の動きです。それらが、斜め上か斜め下という簡単なルールで表現可能となるわけです。

例えば、この配列で「ドレミファソラシド」の音階を演奏することを考えてみましょう。
ドレミまでは全音の関係なので、斜め右下に移動。ミ→ファは半音なので、ここは斜め右上。ファソラシはまた全音なので斜め右下、シ→ドは半音なので斜め右上。
実際には5段あっても、下に行く動きが足りなくなるので、どこかで折り返す必要があるのですが、もしハニカムベルが5段以上あれば(それもいつか挑戦したいです)、上記のように「ドレミファソラシド」を演奏すること可能となるでしょう。

普通の長音階の中で、ファやシは導音と呼ばれ、いわゆるドミナントモーションを形作る重要な音なのですが、その動きが半音という形で可視化されるので、普通の鍵盤楽器などより、より音楽的な音構造がそのまま演奏の動きに反映されるようになるのです。


音楽における音程は、絶対的な音高に意味があるのではなく、相対的な音程関係になって初めて意味を成します。
一面、六角形が敷き詰められたハニカムベルは、どこがどの音だか視覚的には分かりづらいのですが、音程関係はどの調でも全く変わらず、指が覚えたフレージングは、様々な調性やコード的演奏の中で繰り返し利用できます。

そのため、ハニカムベルが奏でるメロディは連続する分散和音的フレーズが得意であり、ややメカニカルで硬質な輪郭を音楽に与えるのではないかと思えるのです。
また、そのようなフレーズを指向するため、ハニカムベルでは個々の音の音量を操作する仕組みは今のところ設けていません。
強く弾けば、大きな音が出るほうが音楽的表現が高いと一見思えるのですが、この楽器の音楽的役割を考えると、むしろ各音の音量変化は演奏しにくさに繋がるように思えます。


・・・などと、いろいろ構想してみても、作ってみないことには話は続きません。
まずは、このバージョンを完成させて、自分自身が最初のハニカムベル演奏者として、このような演奏を探求してみたいです。